BricsCAD の種類
BricsCAD V22 のCAD製品として以下のような種類があります。
- BricsCAD Shape(シェイプ)
- BricsCAD Lite(ライト)
- BricsCAD Pro(プロ)
- BricsCAD BIM(ビム)
- BricsCAD Mechanical(メカニカル)
- BricsCAD Ultimate(アルティメイト)
各製品の機能構成は下のイメージを参考にしてもらうとわかりやすいかもしれません。
製品機能構成イメージ
円の外側の製品ほど機能が多くなっていて、内側の製品の機能を内包している形になります。
BricsCAD V22.2 各製品のコマンド数 (ExpressTools 込)
具体的な機能(コマンド)のボリュームは上表のとおりなのですが、数字で見ても外側の製品ほど機能数が多い事がわかると思います。
それぞれの製品を利用ステージで分けると以下のようになります。外側の製品ほど高度な内容ができるようになります。
利用ステージ別の製品イメージ
BricsCAD V22 各製品の特徴
BricsCADは、2D 作図・編集に必要な機能はすべて備わっていると言っていいレベルにあります。 それを前提とした上で各製品の特徴を説明します。
BricsCAD® Shape の特徴
BricsCAD Shape のロゴ
Shapeのライブラリにある自転車を配置している例
BricsCAD Shape は簡単に使えるモデリングツールで無償で提供されています。DWG、DXF、SKPファイルのビュアーとしても使用することができるので、とりあえず入れておくだけでも役に立ちます。
BricsCAD Shape の特徴は以下の通りです。
- ✨ 無料で使えます。(Windows, Mac, Linux)
- SketchUP の .skp ファイルを開けます。
- DWG・DXFファイルを読み込み・書出しできます。
- STL や FBX, Collada ファイルへ書き出しできます。
- ソリッドのダイレクトモデリングができます。
- BIMに展開しやすい 3Dモデルを作成できます。
- 線や円、ポリライン、文字など簡単な 2D図形を作成できます。
- 距離を計測できます。📏
- イメージをアタッチできます。📷
Shape は、簡単に3Dモデリングができる製品ですが、BricsCAD BIM の機能を一部使えるので BIM 入門ツールとしても捉えることができます。
Shape は Lite や Pro を購入しても使えるので、Lite を購入してちょっとしたモデリングを Shapeで行うという使い方も可能で、2D設計しかやったことのない方は3D設計の感覚をつかむトレーニングにもなるでしょう。
Shape は起動時のランチャから実行できます
また、STL や FBX, Collada ファイルへ書き出しができる点は、3Dプリンタや 3D CGソフトとの相性のいい製品といえます。✨
🎐夏休みの自由研究として、Shape で2D図形からプッシュ/プル機能を使ってモデルを作り、3Dプリンタへ出力や、AR や VR で空間表示するなどで仮想と実在をつなぐテクノロジーに触れてみるのも楽しいのではないかと思います。👍
Shapeから書き出しした collada データ(左)と FBXデータを3D CGソフトウェアの Blender で読み込んだ例
BricsCAD® Lite の特徴
BricsCAD Lite のロゴ
BricsCAD Lite は基本的には昔からある2次元図面を作成する。という方向けの製品といえます。AutoCAD LT や他の .dwg互換CADの低いグレードからの移行先として最初に検討する価値のある製品と言えるかもしれません。
CADでは難しいマルチコアCPUの性能を発揮するマルチスレッド処理の活用やAIベースの機能により低価格ながらもハイパフォーマンスが実現されています。
BricsCAD Lite の機能面で特徴的な点として以下の内容があげられます。
- 最近の標準的な PC なら数秒で起動する軽量な動作。
(中の人のノートPCだと 3, 4秒で起動します。) - ハイパフォーマンスなので大きな図面データでも軽快に動作します。
- AI ベースのデータ効率化・編集補助機能が使えるため、作図時間の削減やファイルサイズの削減ができます。
- スクリプトやメニューカスタマイズなど、AutoCAD LT で行うような簡単に使える作業効率化機能が利用できます。
- 2D(幾何/寸法)拘束機能が使えます。
- ブロックに限定されないパラメトリック機能でパラメトリック設計を簡単に導入できます。
- 高性能な LISP の API を使用した機能拡張やアドオンが利用できます。
- LISP・DCL の開発環境 BLADE が搭載されていて開発が行えます。
- 隠線だけにかぎらずリアルな表示スタイルが利用できます。
- 図面比較やPDF取り込み機能などの補助機能が使えます。
- 図面エクスプローラで、すべての図面要素をコントロールできます。
- 簡単な3Dのソリッドモデリングができます。(Shape を利用)
- ライセンスの種類が豊富にあります。
(シングル、マルチ、ネットワーク、期間ライセンス)
AutoCAD LT やその他の .dwg互換CADで一番安いグレードと比べた場合、BricsCAD Lite は、性能強化が続いている高性能な LISP API を使って機能拡張できる形でありながら、いわゆる買い切りの永続ライセンスやネットワークライセンスなどのバリエーションが選択でき、拘束・パラメトリック機能を制限なく使用できる点が大きく異なる点といえます。
従来と同様の作業工程を行いながら、AI による補助機能でデータを軽量化したり、パラメトリックオブジェクトに自動変換して2D設計においても自然と生産性を高められる製品となっていることが一番の特徴と言えます。
Lite の 2D拘束とパラメトリックの機能(記事用にリボンを浮動状態にしています)
LISP の 開発環境 BLADE の画面 関数名の色付け表示やプログラムのデバック、DCLファイルのプレビューなどができます。
BricsCAD® Pro の特徴
BricsCAD Pro のロゴ
BricsCAD Pro は、Liteで行える2次元図面を作成より高度に効率化、3Dベースの設計の他、多くのアドオンアプリケーションのベースとして使用できるの製品といえます。
2D図面の例
3D図面の例(TINサーフェスとコリドー)
Pro の機能面で特徴的な点は以下の内容が挙げられます。
- Lite のすべての内容を内包しています。
- 高度な3Dモデリング機能(ソリッド、サーフェス、メッシュ)
- 3D拘束とパラメトリック機能。
- 点群(ポイントクラウド)ファイルの読み込みができます。
- 点群関連機能が使えます。(クロップ(範囲切り抜き)表示 / カラーマップ表示 / アダプティブ表示)
- Civil(土木)ツール機能が使えます。
(TINサーフェス、コリドーモデリング、AutoCAD Civil 3D タイプの .dwg データ認識、LandXML 読込/書出) - 3Dオブジェクトも対象にした AI ベースのデータ効率化・編集補助機能が使えます。
- C++(BRX / TX) や .NET、VBA などの API を使用したアドオン利用や独自の機能拡張ができます。(オープンCADプラットフォーム)
- CAD内の表示スタイルだけでなく、高品質なビジュアライゼーションソフトと連携ができます。(Twinmotion® / Lumion® / Enscape™)
- アニメーションに対応しています。
(アニメーションパス/ マルチパラメトリック3Dアニメーション) - 別売りの Comunicator (後述)と組み合わせると、主要な機械系CAD のファイルフォーマットの読み込み・書き出しができるようになります。(Parasolid, Inventor®, SOLIDWORKS®, Catia™, STEP, Siemens NX, Creo, IGES, etc. )
BricsCAD Pro は、AutoCAD や他の .dwg互換CADと比べた場合、点群ファイルが BricsCAD のみで取り込める点や、Civil ツールで計測データを使用して地形生成と道路などのコリドーが簡単に作成できる点、高品質なビジュアライゼーションソフトと連携できる点、多数の様々な業種に対応しているアドオンアプリケーションが活用できる点が特徴的といえます。
BricsCAD® BIM の特徴
BricsCAD の BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング) 思想は、DWGプラットフォームをベースに、初期設計、BIM、製造を継続的に発展するワークフローとして統合するという、他とは異なるBIMのビジョンを元に開発されています。
つまりコンセプト設計から製造までを別々のツールではなく一つの DWGプラットフォームで実現することで、ツールを習得する時間の短縮や導入のコストを低減する効果を期待できます。
BricsCAD BIM でモデルから領域の区分けをしているところ
領域わけされた状態のイメージ
BricsCAD BIM 機能構成としては、BricsCAD Pro の汎用機能に BIM の機能が搭載されているものになります。BIM の特徴は以下の内容が挙げられます。
- Pro のすべての内容を内包しています。
- IFCデータ(ifc, ifczip)に対応しています。(2x3, 4, 4x1 仕様)
- BIMコンポーネントの配置が行なえます。
(壁、床、開口部、カーテンウォール、天井伏、etc) - ソリッドマスモデルを床や壁などのBIMモデルにすばやく変換するクイックビルディング機能が使えます。
- モデルから防火区画などのエリア分けを行う機能が使えます。
- 手のかかるタスクを自動化できます。
- 複数のモデルに寸法を入れられる BIMDIMENSION機能が使えます。
- 寸法の関連付けのロスを低減できます。
- BIMPythonで効率化をはかれます。
- ブロックの表示を詳細・簡易で切替えられます。 - Scan to BIM (点群の3DスキャンデータからBIMデータを生成する機能)を行えます。
- 点群から平面パッチ&ソリッドの作成や自動線検出、自動フロア抽出機能(_POINTCLOUDDETECTFLOORS )を使えます。
- BricsCAD Mechanical で作成されたアセンブリを BricsCAD BIMのコンポーネントのライブラリとして利用することができます。
- MEP(機械、電気、給排水衛生設備)ツールを使えます。
- H形鋼などの構造プロファイル機能からモデルを作成できます。
- 別ソフトの Rhino/Grasshopper と双方向で連携するコネクタが使えます。
柔軟なジェネレーティブデザインモデリングを行う事ができます。 - Revit のファイル(.rfa, .rvt)を読み込みできます。
BricsCAD BIM は、比較的新しい分野のためこれまでもユーザの声を拾ったり、世相に合わせて機能を拡充したりしていますが、Revit® など純粋な BIMツールと比べると機能が少し足りないと感じる点もあるかもしれません。(要望は開発の参考にしているので一家言ある方はご意見お待ちしています。)
費用的には他の BIM ソフトよりランニングコストを抑えて運用できる面がありますので、組み合わせて使うということも考えられると思います。BIM 機能がどんな感じなのか見たければ、こちらのブログ記事を一通り見てみる事をオススメします。
BricsCAD® Mechanical の特徴BricsCAD Mechanical のロゴ
BricsCAD Mechanical は、インテリジェントなメカニカル デザイン プロセスを実現した製品で、2Dスケッチからの3Dパーツモデリングや、3Dパーツやアセンブリから図面ビューを自動作成して寸法や注釈を付けた詳細ビューを簡単に作成することができます。3Dモデルの変更に合わせたビューの更新にも対応しています。
3D モデルから生成された作図ビュー
元の3D モデル
機能構成としては、BricsCAD Pro に機械設計の機能がプラスされている製品です。Mechanical の特徴は以下の内容が挙げられます。
- Pro のすべての内容を内包しています。
- 3Dパラメトリック化および 3D拘束機能が使えます。
- AI によるパーツのパラメタライズ機能が使えます。
- 3Dモデルから、2Dのベースビュー, 投影ビュー, 断面ビュー, 詳細ビューといったモデルと連携する作図ビューを生成する機能が使えます。
- 板金機能(板金変換、板金の展開)が使えます。
- 自動調整バルーン機能が使えます。
- 複数の部品表(BOM)を管理する機能が使えます。
- トレース線付きの多軸分解図作成とアニメーション機能が使えます。
- パラメトリック標準部品:800以上の異なるタイプのコンポーネントからなる、30,000種の標準メカニカルコンポーネントのライブラリが使えます。
- AutoCAD Mechanical タイプの dwg データを認識できます。(すべてのタイプに対応しているわけではないので体験版で確認してください。)
トレース線付き多軸分解図の生成イメージ
BricsCAD Mechanical は、基本は 3Dベースで設計をしていく形の製品となるため、2D のみで機械設計をしたい場合は、BricsCAD Mechanical または Pro に設計内容にあった機械設計向けのアドオンを組み合わせて使いつつ、3D ベースの設計にチャレンジしていくことで 3D設計と AI による効率化のメリットを実感しやすくなるのではないかと思います。
BricsCAD® Ultimate の特徴
BricsCAD Ultimate はいわゆる全部入りの製品で、ここまでで紹介した shape / Lite / Pro / BIM / Mechanical、全ての製品の機能を使うことができます。BIM と Mechanical とで、設計と製造を統合的にコラボレートして高度なエンジニアリングワークフローを実現したいという用途に適しています。
費用的に別々で購入するより安価になっている点や、ワークスペースの切り替えだけで、BIMとMecanical などのツールを切り替えたりミックスして使える点が特徴といえます。
Pro+BIM、Pro+Mechanical、BIM+Mechanical を個別に2本買うよりも安くなっていて、AutoCAD Plus の単年サブスクリプションと同程度の価格で永続ライセンスが確保できるという、コストメリットがあります。
体験版は Ultimate の状態で試用できるので、すべての機能を試しつつライセンスレベルを切り替えて個々の製品の機能を検証することができます。
Comunicator for BricsCAD®
Communicator for BricsCAD のロゴ
ここまでで説明した製品とは別に Shape / Lite 以外に対応した製品として、Communicator for BricsCAD® (コミュニケータ)という製品があります。(ultimate には含まれていません。)
コミュニケータは、主に他社の機械設計向け CAD ソフトのファイルを変換するコンバータで、導入すると BricsCAD のインポート、エクスポートの機能からメジャーな機械系のファイル(Parasolid, Inventor®, SOLIDWORKS®,Catia™, STEP, Siemens NX, Creo, IGES, etc.)を扱うことができるようになります。
対応するファイル形式の詳細は、コミュニケータのページにて確認することができます。
ワークフロー全般にわたって活用される BricsCAD
それぞれの製品は、費用は掛かりますが最初の方に掲載した製品機能構成イメージ のより外側の製品へ移行していくことができます。この流れがあることで、2D から 3D、各業種に特化した活用、コンセプトから設計、製造、ファシリティマネジメントなど、それぞれのシーンにマッチした使い方ができるようになっています。
単純にコンピュータ上で図面を作成する仕事からの脱却を模索するのであれば、BricsCADの製品シリーズと組み合わせで活用できる多数のアプリケーションで最適な環境を構築できます。
で、みんなどれを選んでるの?🤔
ユーザの皆さんに一番多く選ばれている製品はどの製品でしょうか?
一番安い Lite だと思った方は残念ハズレです。
正解は Pro でした!✨
BricsCAD ユーザの約半数が Pro を選択しています。(グローバル、日本国内どちらも。)V20 の頃は、Classic / Pro / Platinum という構成だったのですが、それが V21 で Pro / Platinum が Pro に統合されたという経緯がある点や、Proが「オープンCADプラットフォーム」という形で様々なアプリケーションのベースになっている点があり、求める機能をいかんなく使い倒す製品として選ばれている状況が見て取れます。
また、価格的に AutoCAD® よりも維持費が安いわりにできることが多いという、価値+コストメリットという点での結果でもあります。
Bricsys のコンテンツに国内外の導入事例がたくさん出ています、自動車、建材、プラント、建築、土木、船、機械部品、等々多岐にわたる業種で利用されているため、同じ業種の事例もきっとあると思いますので参考にしてみてください。
各製品の価格は、こちらのページをご覧ください。